2015年10月1日木曜日

冨貴月報二十七年葉月秋分版

冨貴月報二十七年葉月秋分版リリースしました。

http://fukikobo.blogspot.jp/p/blog-page.html

以下、テキスト版です。

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冨貴月報
平成二十七年葉月秋分版

和暦 平成二十七年葉月十一日(秋分)
西暦 2015923

発行:冨貴工房
531-0071大阪市北区中津3-17-12
homepage │ http://fukikobo.blogspot.jp/
mail │ fukikobo@gmail.com


花壇と畑と、植物の時間

工房裏の花壇と畑が賑やかになってきました。花壇にはタイム、レモングラス、ロシアンセイジ、ニホンアオギリと人参がいます。ちょっと悲しいことですが、2年前に漬物石などを合わせて友人に作ってもらったこの花壇とその周辺には、空き缶やパンの袋などが捨てられていることがあります。そして、これは本当に気のせいなのかもしれないのですが、花壇の植物が増えると捨てられるゴミの量が減って、植物が増えるとその量が減るような気がしています。

花壇には昨冬からこの5月頃まで人参たちがところ狭しとひしめき合い、その中の多くが葉を広げ花を咲かせきって枯れるまでを過ごしていたので、それ以降は土を休ませていました。しかしこの夏、数人分のコンビニ弁当や空き缶とペットボトルなどが詰まったゴミ袋が花壇に捨てられているのを発見して「これは我慢の限界!」と思いたち、ハーブ屋さんから苗たちを送って貰いました。なるべく植物とは種から付き合いたいと思っていましたが、心の緊急事態につき規制緩和することにしました。苗を植えて花壇が賑やかになってくると、ゴミの量は確実に減っていきました。「美しい場所にはゴミを捨てたくなくなる」とまでは断言しませんが、少なくともハーブたちがやってきたことで場の空気が変わったような気がします。

その花壇にはさきほど書いたとおり、立夏の頃までは僕の身長ほどに伸びた人参が立ち並び、大きな白い花が咲き乱れていました。この人参は、青森県の十和田で有機農を営む苫米地さんの畑から、全国を自転車で回っているAKOちゃんという友人が送ってくれたもの。この人参がとても大量ですぐには食べきれなかったので、食べるまでの間だけと思って花壇に植えておいたのですが、思いのほかグングン伸びてモサモサ葉を広げていきました。その生育のさまがあまりに力強く美しかったので、花を咲かせて枯れるまでそのままにしていました。枯れてからは根は食べたり鉄火味噌に使ったりして、茎と花は土に混ぜたのですが、今年のお盆の頃に1ヶ月ぶりに工房に戻ると、こぼれ種から小さな人参の葉がいくつも顔を出していました。

苫米地さんは家族で農家を営みながら、せっかく農薬を入れずに畑と田んぼをしてきたのに放射能をまかれては困るということで、青森県六ケ所村にある核廃棄物再処理工場の計画に建設当初から反対し続けてきた女性です。今となっては原発や放射能に対して意見を言える空気は少しずつ広がっている気がしますが、今までずいぶん寂しい思いや辛い思いをしてきたのではないかと思います。2006年に制作された「六ケ所村ラプソディー」という映画にも登場する苫米地さんの畑を、僕も何度か訪ねさせていただいていただき、長年積もった気持ちを聞かせてもらったりしています。あるとき「映画ができてから1、2年は色々な人が訪ねてきてくれるようになって、とてもうれしかった。でも時が経つに連れてその数は減ってきていて、寂しいんだけど、でもこっちから連絡すると相手も気を使っちゃうし。」という話をしていました。苫米地さんの畑からやってきた人参は、本当に逞しいです。この人参たちとの付き合いを通じて、苫米地さんとのつながりを感じていられることをとても嬉しく思います。もしまた花を咲かせて種をつけたら、その種を持って苫米地さんの畑を訪ねたいな、などと妄想しながら花壇を覗き込んでワクワクしています。

工房からすぐの「まちなかファーム」の一角にある僕の畑には、蕎麦と金時人参と藍と赤紫蘇などが育っています。蕎麦と金時人参の種は、シードライブラリー「たねの図種館」から借りたもの。シードライブラリーとは、色々な植物の種を保管して貸し出し、借りた人は栽培して収穫した種を返すという仕組みです。うちの工房は、自分たちで作った書籍「つながりのなかで はたらき まなび あそぶ」の売上を元手にして作った”あたらしい仕事の種を育てるみんなのがまぐち”というコンセプトのコミュニティバンク「モモのがまぐち」の事務所でもあるのですが「たねの図種館」はその出資先第一号でもあります。
種を蒔いてから3週間ほど留守にしていましたが、蕎麦はすでにぐんぐん伸びており、発芽率が低いといわれる人参も賑やかな集落を作っていました。そして、畑の端に積んでおいた干し草の山からは昨年のこぼれ種から発芽した藍が顔を出し、近所の畑から飛んできた種から育った赤紫蘇もかなり幅をきかせてきました。

僕の畑はほとんど何の手も入れないので、見た目は畑というより草むらのようです。収量や効率を考えたらもっといろいろやることもありそうなのですが、今は植物たちのことをよくわからないのにあれこれ手を加えるという気になれず、どちらかというと収穫のためというよりひとつひとつの植物と付き合うために畑をやっているような気がします。人間以外の生命たちがどのように生きているのかを、種が土にこぼれてから枯れていくまでの生き様に寄り添いながら感じとっていくこと。何か想定外のことが起きても解決策に走るよりも見守り続けることで分かることがあるし、時間をかけてじっくり向き合うことですこしずつ見えてくるものがあります。そして、寄り添えば寄り添うほどに、それぞれの生命の持つ「生き抜く力」に驚き、励まされます。

僕たちは生まれてから死ぬまでずっと植物たちのおかげで生きています。助けてもらっていたのに知らなかった植物たちの生き様。これからもずっとお付き合いしていく植物たちとのつながりを取り戻していくことが、小さく小さく始まったばかりという実感があります。

人間社会の中で生きる上でも、助けを求めているように見える仲間に対してアドバイスやサポートをしすぎることで相手の自由やその人が本来持っている生きる力を奪うことになってしまうこともあるし、自分の中にある心配や不安を相手に映し出して、よかれと思って問題解決に走ることで逆に見落とすものがあるように思います。

お互いの生命力を信頼しあって寄り添いあうことの大切さ。小さな花壇と畑をつうじて植物の世界、植物の時間とつながりながら、命と命の関わり合い方を教えてもらっているような気がします。


冨貴工房 イベント情報
104日 冨貴工房マルシェ
10時~17
出店者
アルコバレーノ 八寿絵(Yasue)Raw8Cafe(ローフード)エナビューティー、wacca
sweet spice NANAE、たあさん(カードリーディング)、かぼちゃ企画(カードリーディング)
むすび食堂(食べ物) 、ビバーク(ヘンプショップ) ほか


1026日『南部菱刺し 手仕事教室』
11時~16
定員10名 ※定員になりました。キャンセル待ちのみ受け付けます。
参加費 3500yen (養生ランチと炭火焙煎コーヒー付)

南部 菱刺し◎
菱刺しは八戸を中心とした青森県南部地方の農村で古くから伝えられた刺し子の一種です。
寒冷地で麻を栽培し衣類を自給する生活でしたので、その大切な衣類を保温補強のために刺すのは生活の知恵でした。菱刺しの歴史は凡そ200年位前からで、刺し継がれ残った模様は200年もかかって何万人かの女の創り出した造形美で、それぞれに美しく素晴らしいものです。今回はヘアゴム作りか、持込みの衣類、布に刺繍をします。

吉島康貴 『yas』◎
青森県八戸市生まれ。2007年 バンタンデザイン研究所 スタイリスト科卒業。
卒業後、青森に戻った際に菱刺しに出会い、刺し始める。九州で備長炭を焼き、その炭で珈琲を焙煎する『ろっかく珈琲』を主宰。2015年から生活のベースを青森に移し、人が自然の一部である事を実感できるような生活を模索しています。


1129日 『福島第一原発収束作業員に届ける鉄火味噌作り』
10時~17時 
参加費:無料(カンパ、昼食持ち寄り歓迎) 
定員:12
お気に入りのまな板・包丁をお持ちの方はご持参ください。


1130日 『玄米と木の実入り味噌作りと効き味噌』
13時~16時 / 19時~22
定員:各10名 ※残席わずかです。
参加費:4500円(味噌2キロ持ち帰り+養生味噌汁付き) 
無農薬大豆、天然釜炊き塩、天然玄米糀、木の実、麻炭を入れた養生味噌作りです。利き味噌では約10種類の天然味噌を味わっていただけます。2キロ以上持ち帰り希望の方は1キロ1500円で追加が可能です(事前にご連絡ください)。

124日 『放射能対策のお話と高麗人参+自然薯+麻の実入り養生鉄火味噌づくり』
10時~17時 
参加費:4500円(養生昼食、鉄火味噌付) 
定員:10
伝統的養生食のひとつであり、冷え性やむくみ、貧血などの特効薬でもある鉄火味噌。今回は昔ながらのレシピに習って自然薯、麻の実、高麗人参、麻炭を入れて仕上げます。放射能対策についてのお話もしたいと思います。お気に入りのまな板・包丁をお持ちの方はご持参ください。


126日 冨貴工房マルシェ
出店者大募集中です


1226日『茜染めワークショップ』
10時~17
参加費:3500円(染め素材代別途 / リピーターの方は1000円引き)
染め素材持ち込みについては応相談(目安150g以下)
定員:8
10時~12時 茜の効能、作業の手順の話
12時~13時 昼食と染めの下準備
13時~16時 染め作業(4回染め)
16時~17時 片付け・シェアリング~終了


1227日『麻炭染めワークショップ』
参加費:3500円(染め素材代別途 / リピーターの方は1000円引き)
染め素材持ち込みについては応相談(目安150g以下)
定員:8
10時~12時 麻炭の効能、作業の手順の話
12時~13時 昼食と染めの下準備
13時~16時 染め作業(4回染め)
16時~17時 片付け・シェアリング~終了

すべてのワークショップは事前に申し込みが必要です。
材料の手配などの都合上、直前のキャンセルはなるべくお控えください。


ご予約・お問い合わせ 
冨貴工房 
531-0071
大阪府大阪市北区中津3-17-12 
http://fukikobo.blogspot.jp/  

06-6372-7281 / 080-6947-2491(冨田)